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第5話 富士文献と申しますのは、宮下文献(みやしたぶんけん)、とも言われておりまして、日本の太古の歴史が書かれたました厖大(ぼうだい)な書物でございます [ミステリー小説]

 天狗

 その日の午後、神田龍一(かみたりゅういち)と高見刑事は新幹線に乗り込んだ。

 「しかし、神田さん。神田さんは、捜査する権限も、する気もないと言ったばかりじゃないですか?」駅弁の包みを外しながら高見はチラッと横に座っている神田を見た。
 「台風のおかげで、いろいろと業務もあるんですけど、警察と市から観光推進協会へ要請がくれば、私が動かないわけにはいかないですからね」と、言い訳のような返事をした。
 「そう言う高見さんも、この件は警察庁へ移ったと言ってたじゃないですか」神田は弁当を頬張りながら言った。 
 「いやー、私は、もうじき定年でね、わりと自由にさせてもらってるんですよ。それに、民間人一人に危ない橋は渡らせられませんからね。言ってみれば、ボディーガードみたいなものですよ。それに、この一件の担当はもともと私ですから」そう言って登山ズボンのベルトをゆるめた。

 「で、富士山本宮浅間大社(ふじさんほんぐうせんげんたいしゃ)さんへは連絡を?」神田は高見刑事に聞いた。
 「ええ、本署が連絡をしてくれていると思います。窃盗事件の件で、お話を・・・と。しかし、富士山かぁ。体力、大丈夫かなぁ。学生時代に一度登りましたがね。もう登ることはないと思ってましたが」高見刑事はお茶を一口飲んだ。

 「高見さんは山登りがお好きなんですか?」神田もペットボトルのお茶に手を伸ばしながら聞いた。

 「いや、昔の話ですよ。わたしの爺さんが山登りが好きでね。家には爺さんや曽祖父(ひいじい)さんが山で拾って来た石っころやら木の根っ子やら、何やらわけの分からない物がたくさんありましたよ」と、懐かしそうに答えた。そして、思いついたかのように「定年になったら日本百名山でも踏破してみるかな」と言うと「ははは」と、愉快そうに笑った。

 新大阪を過ぎた頃、
 「ちょっと、ここまでの話をまとめておきませんか?」そう言うと神田は、きりっとした眼差しで高見を見た。
 「そうですね」高見もそれに静かに応えた。
 「まず、あの大男ですが。宝物館(ほうもつかん)に忍び込む2日前にはビデオに写っていた。その時、たまたま、例の中国大使館の連中と一緒になった。ここまではいいですね」
 「ええ。そして、いったん引き上げ、台風がやって来るのを知りながら、弥山(みせん)頂上へ登って、なにやら、怪しげな行動をして、そのまま、夜までどこかに身を隠していた」高見は箸を持った手を右、左へ動かした。
 「展望台の主(あるじ)の話だと、大きなザックを背負っていたらしいんです」
 「しかし、神田さんが見た時は裸同然だったんですよね」神田のほうを見て高見は言った。
 「なぜ、台風の危険を冒(おか)してまでもその日でなければならなかったのか?普通の日の夜でもいいじゃないですか」そう言いながら、高見を見て同意を待った。
 「台風だと、万が一の時に、警察が駆けつけるのが遅くなるとか、逃げやすくなるとか、考えたんですかね?」
 「それとも・・・」
 「それとも、もう、時間がなかったのか」神田の言葉を次いで高見は言った。
 「中国大使館の連中に先を越される。時間がない。そう思って、台風の日にやむを得ず侵入した。こう考えられませんか?」神田は再び高見の同意を待った。
 「なるほど。それも、その男の国の外交ルートは使えない理由がある。こういうことですね」
 「たぶん」
 「しかし、たまたまにしても、よくも、あの日、宝物館でかち合ったもんですね」
 「あの鉄の棒が展示されているという情報を、同時か、ほぼ同時に耳にしたということじゃないですかね」
 「うーん・・・どこから?」高見は弁当から顔を上げ聞いた。
 「さあ、それはまだ・・・」神田は、箸を置き、蓋(ふた)をしながら小さな声で言った。
 「シューマイ残すんですか?」神田の弁当を覗き込んで高見は言った。
 「え?ええ。最近ちょっとダイエットを・・・」
 「じゃ、いただきますよ」高見は箸でつまんで、ポイッ、と口に放り込んだ。



 「のぞみ」を名古屋で「こだま」に乗り換え、新富士駅からはタクシーで富士山本宮浅間大社(ふじさんほんぐうせんげんたいしゃ)に向かった。
 「さすが、立派なものですねー」高見刑事は、ホーッ、という感じで言った。
 富士山本宮浅間大社は全国1300社以上ある浅間神社の総本宮で、駿河(するが)の国の一の宮として全国的な崇敬を集める東海最古の名社である。
 「残念だなー。本来ならここから富士のお山が見えるんでしょうがねえ」と、高見刑事は本当に残念そうに言った。日も暮れかけ、おまけに上空は雲が流れている。また、雨でも降りそうな気配だ。

 境内(けいだい)に入ると、夕暮れ時にもかかわらず、散歩といった感じの人たちや、観光客の姿もまだ見える。参拝客も多いのであろう、境内の木はおみくじの白い花を咲かせている。砂利の敷き詰められた参道を進み、社務所で案内を請うた。
 「はい、聞いています。こちらへどうぞ」巫女(みこ)さんに案内されて奥の部屋に入った。しばらくして、宮司が現れた。

 「お忙しいところ申し訳ございません」神田(かみた)と高見は立ち上がって頭を下げた。
 「いえ、いえ、ご苦労様です。で、窃盗事件と当社と、どういう関係が?」宮司は少し怪訝(けげん)な様子で椅子を勧めながら聞いた。高見刑事はこれまでのいきさつをかいつまんで話し、新聞の写真を見せた。

 「さようでございますか。これが、宮島さんにも・・・」宮司は、考え込む様子で新聞をテーブルに置き、目を閉じた。
 「その、鉄の棒について何かご存知のことがございましたらお教え願えませんでしょうか?」高見刑事は体を前に出しながらたずねた。
 「私は、あれが何かは、全く存じていないのですよ。何度か目にした事はございますが。もともとは、あれは、奥宮(おくみや)にあったものではございませんで」
 「え?すると、どこからか移されたということですか?」



 神田(かみた)の問いかけに、宮司は
 「はい、さようでございます。もともと、あれは、富士山頂にあったものでございまして・・・」
 「え?山頂に?奥宮は富士山頂じゃないんですか?」

 コツコツ、とノックがあって、職員が入ってきた。宮司は、ドアのほうを振り返りながら、
 「はっ、はっ。富士山頂は剣が峰でございますよ」そう言った。入ってきた職員は、 
 「あの、先ほどのお客様がお帰りになられますが・・・」と言うと、
 「あ、そうですか」と、立ち上がりかけると、
 「いえ、お見送りは結構です、ということでした」職員はそう言って出て行った。その間、高見刑事は、自慢げに、
 「そうですよ、神田さん。レーダードームがあったところが富士山頂、剣が峰。日本一のてっぺんですよ」
 「そうなんですか。知らなかったなぁ」神田は椅子に座りなおした。その時、社務所の壁にポスターが貼ってあるのに目がいった。そのポスターには「御鎮座(ごちんざ)1200年記念事業奉賛会」とあった。
 「これは?」神田は立ち上がり、ポスターのところへ行って聞いた。
 「はい、来年2006年(平成18年)が坂上田村麻呂(さかのうえたむらまろ)様が浅間大神(あさまのおおかみ)様を当地に遷宮(せんぐう)されまして1200年の節目の年に当たりますので、その記念事業へのご協力をよびかけるポスターでございます」
 「へー。実は、宮島も、空海さんが宮島に渡って、弥山(みせん)で修行をし、開基したのが806年ですから、来年2006年が、弥山開基1200年の記念の年になるんですよ」
 「はい。そういうお話は伺っています。奇遇でございますね」宮司は、ニコニコしながら応えた。

 神田は椅子に戻ろうとして、ポスターの横のスケジュールボードにふと目をやった。その年間スケジュールの中に「厳島神社例祭」と書き込まれているのを目にしたのだ。
 「ここにも、厳島神社が?」神田は何か因縁めいたものを感じ始めていた。



 「それで、その鉄の棒が剣が峰から奥宮へと移ったいきさつは?」高見刑事が、神田が口を開く前に尋ねた。
 「それは存じております」宮司は静かに答えた。
 「先ほど刑事さんがおしゃっていらしたレーダードーム。あれが建てられるかなり前のことです。1895年といいますから明治28年のことでございますよ」宮司は引き締まった顔で軽くうなずきながら話を続けた。

 「野中至(のなかいたる)という方が、私財をはたいて、その富士山頂、剣が峰に気象観測所をお作りになられましてましてね。それはそれはご苦労をされ、なにしろ、今でさえ山頂での越冬は大変なことですのに、当時は、まだ、ましな装備もないことでしょうし、日本国のことを心底思ってのことでございましょうねぇ・・・」そう言って、袂(たもと)からハンカチを取り出し目に当てた。
 「それで、その鉄の棒は?」高見刑事は質問を続けた。
 「はいはい、それで、その観測所を作るために、剣が峰の大きな石を動かしたところ、鉄の箱が出てきたらしゅうございまして、その中に、なにやら、御文書(ごぶんしょ)と一緒に、その、鉄の棒が納められていたらしいのです」お茶を一口飲んで、落ち着きを取り戻し、話を続けた。

 「これは、私が直接聞いたことではございませんで、先代の宮司から私は聞いたものですから、確かなことは分かりかねますが、なにやら、そういうことらしゅうございます。そして、野中様は、これは、富士山頂に丁寧(ていねい)に納められていたところから察するに、富士山と、よほどのいわく、因縁(いんねん)があるものであるものに違いない、とまあ、こんな風に思われたのでございましょうね。先々代の宮司に頼んで、爾来(じらい)、浅間大社奥宮にお祀(まつ)りさせて頂いていたのでございます」



 「誠に恐縮ですが、その、鉄の棒を、捜査協力ということで、しばらく、拝借(はいしゃく)できないものでしょうか?」高見刑事は、両手をテーブルに置いて宮司を見つめた。
 「私といたしましても、あれが宮島さんと何かの関係があるということが分かりましたし、あの鉄の棒と私どもとの関係が解明できるのであればありがたいことでございます。それに、あれは、もともと、神社庁とはかかわりのあるものではございませんし、後日、返還いただける、ということを条件にお貸しいたしましょう」宮司はニッコリと微笑(ほほえ)んだ。
 「ありがとうございます。ご協力感謝申し上げます」神田と高見はテーブルに両手を着けて頭を下げた。

 「じゃあ、明日にでも、登ってみますか?神田(かみた)さん」高見刑事は神田を見て言うと、神田は、
 「でも、もうシーズンも終わりましたし、鍵が掛けられているのでは?」そう言って宮司を見た。
 「いえ、ちょうどよろしゅうございました。明日は職員が、鍵を開けますので」
 「と、言いますと?」
 「新聞社の取材が急に入りましてね。何でも取材の皆さんは明後日にはお国に帰られるとかで、この台風でスケジュールが大狂いだと嘆いておられましたよ。本来ならば、丁重にお断りするのですが、何しろ、大使館からのたってのお願いでございまして」

 大使館と聞いて、神田と高見は緊張して尋ねた。
 「大使館?どちらの?」
 「中国でございます」



 「先ほど、お車で五合目に向かわれました」宮司は、それが何か、と言う様な顔をした。
 「じゃあ、先程の、お客様というのは・・・」神田(かみた)と高見は顔を見合わせて立ち上がった。
 「さようでございます。中国の新聞社の方々でございます」
 「何人ですか?」高見刑事が聞いた。
 「3人様でございます」
 「私どもの職員が一人ご案内役としてご一緒させていただいていますから、全部で4人でございます」宮司は、両手を膝に乗せて答えた。
 「じゃあ、中国人は3人?」神田の顔がやや紅潮した。
 「さようでございます」宮司もゆっくりと椅子から立ち上がった。

 宮司は思いついたように、
 「そうだ。その職員に電話をして、鉄の棒を持って帰るように申し伝えましょう」
そう言って、懐(ふところ)から携帯電話を取り出した。
 「あ、ちょっとお待ち下さい。その新聞社の男達は何か言っていましたか?」
 「いえ。ただ、天気が心配だとか何とか、と、おっしゃっていらっしゃいましたが」携帯電話を懐(ふところ)に納めながら宮司は言った。
 「高見さん、どう思います?」神田は高見刑事の顔を見た。
 「今までの流れから行くと、新聞社じゃないでしょう。それにしても速攻だな」高見は腕時計をチラッと見た。
 「隙を見てその鉄の棒を奪い取る気ですよ、きっと」神田は床に置いたザックに手をかけて言った。

 「どういうことでございましょうか?」宮司には事態は飲み込めていない。
 「予備の鍵をお貸し願えませんでしょうか?」高見刑事は宮司の顔を見つめて言った。
 「それはよろしゅうございますが・・・」
 「職員の方には何もおっしゃらないで下さい。私達もこれから富士山に向かいます」高見刑事はザックを抱え、神田と共に、宮司に頭を下げた。



 「ところで、先ほど、宮司さんは、あの鉄の棒は、御文書と一緒に、と、おっしゃいましたが、その御文書は今は?」社務所から出て裏の駐車場へと歩きながら聞いた。日はもう落ちて、外灯の灯りが境内(けいだい)を照らしていた。
 「それは、その鉄の棒が入っておりました箱と一緒に、野中様がご自宅にお持ち帰りになりました。私も聞いた話でございますので、定かではございませんが、なんでも、その御文書は、その後の富士山の噴火の溶岩の熱のせいございましょう、大半が燃えて灰になっていたらしゅうございます」宮司はいくぶん顔を傾け神田の顔を見ながら答えた。
 「で?」
 「はい。ご自分ではどうしようもないので、ある人に分析、解読を頼まれたとか聞いております」
 「そのある人とは?」高見刑事は手帳を取り出しながらたずねた。
 「いや、これは、定かではございませんので・・・」宮司は言葉を濁(にご)した。
 「何か不都合なことでも?」
 「これは、私どもとは関わりのないことでございますが・・・」
 「?」神田(かみた)と高見は同時に宮司の顔を見た。
 宮司は思い切ったように言った。
 「富士文献(ふじぶんけん)というのをご存知でございましょうか?」



 「富士文献(ふじぶんけん)?何だか聞いたことがあるような、ないような」高見刑事はボールペンで手帳をポン、ポン、と軽くたたきながらつぶやいた。宮司は、それでは、といった風な感じで説明を始めた。

 「さようでございますか。富士文献と申しますのは、宮下文献(みやしたぶんけん)、とも言われておりまして、日本の太古の歴史が書かれたました厖大(ぼうだい)な書物でございます」
 「あーあ、なんでも、古事記よりも古いとか言われている」高見は、おぼろげながらに思い出した。
 「さようでございます。それは、徐福文献(じょふくべんけん)とも言われておりまして、そもそもは、古代文字で木片などに書かれていたのでございますが、それを、徐福さんが漢字に書き直されたと言われております」タクシーのやって来る車寄せの方向へ手を軽く伸ばし、神田と高見は宮司に続いてその方向へ曲がった。

 「しかし、それは、伝説の類(たぐい)では?」神田(かみた)は聞きにくそうに宮司に言った。
 「さあ、それは、私には分かりかねますが、徐福さんが古代文字から漢字に書き直す、まあ、翻訳する、とでも申しましょうか。それを代々手伝っていた家系がございまして・・・」
 「それはいつ頃の話なんですか?」神田は背負ったザックのベルトに手をやり、グイッ、と揺すって背負いなおした。
 「いろいろと説はございますが、今から、少なくとも、2000年以上も前のことだといわれております」

 「2000年!?」神田は、「そんなことはありえないな」と、思った。
 「それで、その・・・エート・・・」
 宮司は高見刑事の言葉を次いで、
 「徐福(じょふく)さん。その徐福さんの手伝いをした家系が代々この富士の裾野(すその)におられまして」
 「今でも!?」高見刑事は驚いて宮司の顔を見た。
 「はい」宮司は自信ありげに答えた。
 「今でもですか!?」神田も幾分念を押すように宮司に尋ねた。
 「はい。宮下家の遠縁に当たられますが、今は、富士吉田の小さな神社をお守りになっていらっしるお宅がございまして、そちらなら、その御文書の解読ができるのではと、野中様はお思いになられたのでございましょうね」
 「で、結局、その御文書には何が書かれていたのですか?」高見刑事は車のライトが近づいてくるのに気がついた。
 「あ、タクシーがまいりました」



 高見刑事は、タクシーから警察庁の外事課の鈴木刑事に連絡を取った。鈴木刑事によると、東京駅までは確かに一緒だったということだった。
 「すると、それからすぐに、やっこさんたち、支度を整えてこっちに向かったということか。よほどあせってるな、これは」
 「ですね。だから、今回は警察庁抜きで動き始めたんでしょう」神田はすれ違う車のライトをぼんやりと眺めながら、頭の中で今回の一件をもう一度整理した。

 タクシーは市内を抜け、やがて富士山スカイラインに入った。
 「どうも、話が見えてきませんね」神田は、腕を組んで前を見たまま言った。
 「どうしてこの一件に中国大使館が絡んでくるんだか?」高見刑事も自分自身に問いかけるようにつぶやいた。
 「高見さん。これは?」神田はそう言って、右手の人差し指と親指を立てた。
 「ここに」高見刑事は胸のふくらみに手をやった。
 「まさかね。まさか、これの出番はないでしょう!?」高見は、そのふくらみを軽く一回叩いた。
 「と思いますが。念には念を、ですよ。今回の件は、どこに話が転がって行くか分かりませんからね」

 日が落ちて、あたりはすっかり闇に包まれている。時折り対向車とすれ違うが、タクシーの運転手の話によると、六合目までは、観光客でも登れるらしく、まだ山小屋も営業しているらしい。神田たちは、新五合目の「表富士宮五合目レストハウス」に宿泊予約を入れていたが、休憩だけして今夜中に出発するつもりでいた。宮司から、浅間大社の職員は六合目の山小屋に宿泊して、夜中2時頃に出発の予定だと聞いたからだ。



 「表富士宮五合目レストハウス」には二階の売店の奥に宿泊者のための部屋がある。神田(かみた)たちは荷物を置いて一階の食堂へ向かった。
 「腹が減っては戦(いくさ)は出来ませんからね。それに、体を高度順応させる必要もありますし。高山病をなめたら、痛い目にあいますからね」高見刑事はそう言って蕎麦(そば)をすすった。

 「連中より先にあれを手に入れて、そもそもあれが何なのかを解明しないことには・・・」神田はそう言って、窓の外を流れるガスに目をやった。
 部屋で2時間ほど横になって、夜11時過ぎ神田と高見はレストハウスを出発した。合羽(かっぱ)を着てガスに包まれている外に出、頂上方向を眺めたが、湿気を含んだガスに阻(はば)まれて何も見えない。

 「あっちもこっちも見えないものばかりだな」高見刑事はストックのバンドに手を通しながら小さく言った。懐中電灯で足元を照らしながら、一歩を踏み出した。六合目までは歩き易い道が続く。じきに合羽の表面は濡れて水滴がつき始めた。六合目の手前で、懐中電灯の明かりをやや絞り気味にして、六合目山小屋「雲海荘(うんかいそう)」の前を通り過ぎ、左手に曲がり、本格的な登山道に入った。フードを被(かぶ)った神田の耳には、足を踏み出すたびに「ハッ、ハッ」という自分の息と「ジャリッ、ジャリッ」という足音だけが聞こえてくる。



 八合目を過ぎたあたりからガスが薄くなり、神田と高見刑事は合羽を脱いでザックのバンドにくくりつけた。
 「これどうですか?」高見刑事はチョコレートの箱を開けて神田(かみた)のほうに差し出した。
 「あ、頂きます」神田は手刀を切るしぐさをして一粒つまんだ。
 「あれ?ダイエットは?」そう言って高見刑事は神田をからかった。
 「ははっ、登って下りたらカロリーは十分消費してるでしょうから」そう言い、
 「あとどれくらいですかね?」とザックを背負いながら高見刑事に聞いた。
 「この調子で行くと夜明け前じゃないですかね」高見刑事は帽子を取って、上の方に見え隠れする赤茶色の砂礫(されき)を眺(なが)めた。



 神田(かみた)と高見刑事は、最後の鳥居の手前で再び腰を下ろした。ガスは薄くはなったものの、なかなか晴れない。
 「高見さん、頭、大丈夫ですか?」神田はスポーツドリンクを一口飲んで聞いた。高見刑事もドリンクのキャップを外しながら、
 「私は大丈夫ですよ。神田さんは?」と神田の顔を見た。
 「最近の寝不足がたたって、がんがんします」神田は目を閉じて、頭をゆっくり回しながら言った。
 「もう、ヘッドライトはいいでしょう。頭からベルトを外すとだいぶ楽ですよ」高見刑事は自分もヘッドライトを外しながらそう言った。
 「そうですね」そう言って、ヘッドライトを外してザックに納め、大きく深呼吸を何度かした。しかし、空を見上げると、まだ、クラッと貧血になったような感じになる。

 「さあ、もうじきです。でも、ここからが長いんですけどね」そう言って頂上の方向を見た。
 「あ」高見刑事は一方向を凝視している。
 「どうしました?」
 「人影が。今一瞬ガスの切れ目に人影が見えました」その方向を見据えたまま答えた。
 「ひょっとして、連中ですかね?」神田も、高見刑事の視線の先を見つめたが、再び薄くガスがかかってしまった。
 「でも、まだ出発してないはずでしょ?」神田は、靴ひもを締めなおし、ザックを背負った。
 「いや、いや、それは当てにできませんよ。ともかく、急ぎましょう」
 ふたりはピッチを上げて歩き始めた。



 頂上の山小屋が見えてきた。幸いなことに、「このガスで気付かれていないはずだ」神田(かみた)と高見刑事はそう思いながら頂上直下の岩陰に身を隠した。ふたりはここでザックをおろし、身軽になった。
 「高見さん、どうしますか?もし、連中が大使館員なら、身分を偽わってまであの鉄の棒を盗もうとしてることになりますね?」岩に背を押し当てて小さな声で言った。

 「新聞社の人間なら、何も問題はないわけですがね」高見刑事も岩に背をつけて神田に並んで座っている。
 「こんにちはー、って出て行きますか?大使館員なら何か行動を起こすでしょうし、新聞記者なら、こんにちは、ですむでしょうし」神田は、両手の指と指を胸の前で組み合わせて手袋をギュッ、と締めた。

 「まず、顔を確認しましょう」高見刑事は岩陰から少し顔を覗かせ奥宮(おくみや)入り口付近に固まっている人影を見た。
 「間違いないですね。大使館員です。でも、三人だけですね。神社の職員はどうしたんでしょうね?」神田のほうを振り返って言った。今度は神田が、少し伸び上がって様子をうかがった。

 「あれっ、なんだか、慌(あわ)ててますよ。どうしたんだろう?」
 三人は、ますます慌てた様子で、鳥居と奥宮の間に散らばって周辺のあちらこちらに目をやっている。
 「どうしたんでしょう?」神田と高見刑事は再び岩陰に身を隠した。



 男達の声が大きくなって、一か所に固まっているようだ。神田(かみた)と高見刑事はゆっくりと覗いた。男達は奥宮の屋根の上を指差し、口々に何やら叫んでいる。ガスの流れが早くなってきた。屋根の上に何か黒いマットのようなものが置いてあるのが見えた。男達は、そのマットに向かって、必死に何か叫んでいる。風で、サーッとガスが流れ去った。黒光りしているマットは、奥宮(おくみや)の屋根の上で、ムクムクと動き始め、風にあおられて大きく広がった。

 「あっ!!」
 「どうしました?」
 「あいつだ」
 「えっ、宮島の大男?」
 「そうです。奴だ」
マットだと思ったのは黒い男の体であった。その男は、富士宮浅間大社奥宮(ふじのみやせんげんたいしゃおくみや)の屋根の上に大きく立ち上がった。宮島の時と同じく裸だ。背中にはザックを背負っている。中国大使館の男達は、男の巨大さに圧倒されたかのように、一、二歩あとずさりした。男は鉄の棒を握り締めた右手をゆっくりと上げ、口にくわえた。かと思った瞬間、ポーン、と郵便局の屋根に飛び移り、そこから下に飛び降りて、剣が峰方向に走った。

 神田と高見の視界からは山小屋の陰になって大男の姿はあっという間に見えなくなった。大使館員たちは、ザックを放り出して、後を追いかけ始めた。
 「まるで猿か天狗だな」高見刑事はつぶやいた。
 その時、
 「パーン!!」という乾いた音が鳴り響いた。
 「トカレフだ」高見刑事は目を光らせ、小さく言った。
 「あの銃声はトカレフのものだ」



 男達の足は速かった。とても普通の大使館員とは思えない。しかし、大男はもっと速い。見る見る距離をあけている。神田と高見刑事も必死で後を追いかけた。神田は、ガスの合間から見える富士火口をチラと見やり、「まるで地獄の釜だ」と思いながら前方200mほど先の大使館員達を目で捉えた。そして、さらに先を行く大男が「馬の背」と呼ばれる急勾配の登山道を苦もなく駆け上がっているのを見て、改めてこの男の尋常でない運動能力に驚嘆した。


 大使館員たちもようやく「馬の背」の取っ掛かりに着き、登り始めたが、ザラ、ザラと崩れる火山岩の砂礫(されき)に足を滑らせている様子が見える。再び、「パーン」と音がした。
 「高見さん、ハア、ハア、大男はどこへ行くつもりでしょう?ハア、ハア・・・」息を継ぎながら神田は高見に聞いた。高見刑事も「ハア、ハア、あの先は剣が峰ですけど、そこから先は、ハア、ハア、断崖絶壁ですよ。ハア、ハア・・・」

 再びガスがかかってきた。時折り、空全体が、パパッ、と光る。
 大男は、「馬の背」を登り切り、階段を駆け上がって、気象観測所の建物の上に上がった。大使館員達もようやく「馬の背」を登り切って、気象観測所への階段に足を掛けた。大男はまるで大使館員たちを待ち受けていたかのように観測所の屋根の上に立っている。宮島でカクと名乗った男が右目だけを異様に大きく見開いて、右手に握ったトカレフを大男に向けて何か言った。大男は鉄の巻物をくわえた口の端を上げて嗤(わら)った。もう一度カクが何かを言って左手でトカレフを支え、腕に力が入った時、空が再び、ピカッ、と光った。大男は空に向かって飛び降りた。

 「パーン」「パーン」二発の銃声が響いた。
 男達は、中国語特有の甲高い声で何やらわめきながら観測所の屋根に上がり、大男が飛び降りた方向を見た。
 大男は雲に向かって落ちている。



  神田たちには剣が峰で何が起こっているのか分からなかった。男達の喚(わめ)き声と銃声で、ただ事ではないことが起こっている、それしか分からなかった。「馬の背」をようやく登り終え、お鉢巡りと呼ばれる火口周遊ルート方向へ少し下ったところに身を隠した。ここならガスで見えないはずだ。男達は、何やら叫びながら階段を駆け下り、ザーッ、ザーッと音を立てて「馬の背」を転がるように下っていった。

 神田と高見刑事は「馬の背」を登りきったところまで戻って観測所の建物のある剣が峰頂上へ上がろうとした。その時、観測所の向こう側のガスがサーッと晴れて、巨大な鳥が風に乗って舞い上がって来た。それは、ゆっくりと大きく旋回し、雲に映ったその影はまるで巨大な烏(からす)のようであった。

 「カメラ!!」高見刑事は神田(かみた)に向かって叫んだ。神田はポケットから携帯電話を取り出し、「パシャッ、パシャッ、パシャッ」レンズを大男に向けて3回シャッターを切った。
 大男は、巧みな操作で風に乗り、駿河湾方向へ飛んでいった。その姿も写真に撮り続けた。神田は、無言で、男の姿が黒い点になるまで見続けていた。高見刑事は警察庁の外事課の鈴木刑事に電話をかけ、状況を報告している。
 「外事課はなんて言ってました?」
 「中国大使館に、今回の件の報告を求める、それだけです」携帯をパチッと折畳みながらがらそう言った。
 「あの大男のことは?」
 「山頂から民間人がパラグライダーで飛び降りたぐらいではヘリは出せない、とさ」ポケットに携帯を納めチョコレートの箱を取り出した。
 「ま、そうでしょうね」神田は、高見刑事が差し出した箱からチョコレートを一粒つまんで口に放り込んだ。
 「猿から烏(からす)に変身ってわけか・・・」高見刑事は大男の消えた方向を見つめながらつぶやいた。



 神田(かみた)と高見刑事は、3時間かけて5合目まで下りた。山頂では晴れ間も見えていたが、5合目は依然ガスに覆われて、山頂の姿は見えない。観光客を乗せて来ていたタクシーに乗り、富士山本宮浅間大社(ふじさんほんぐうせんげんたいしゃ)まで戻った。

 高見刑事は、拳銃発射の件や大男が剣が峰から飛び立ったことは伏せて、何者かが、中国の新聞社の人間が着く前に、奥宮(おくのみや)の扉を壊して鉄の棒を盗み出し逃走したことだけを宮司に話し、被害届を出すことを勧めた。

 「私どもの職員も五合目で新聞社の方々からそのように聞き、連絡をよこしましたが、本人は、体調が優れないとのことなので先ほど帰宅させました。今、ちょうど、状況確認のために職員を奥宮様に向かわせたところでございます。何とも恐れ多いことでございます。しかし、おふたりともご無事で何よりでございました」宮司は、ふたりにお茶を勧めた。

 「職員からの報告によりますと、昨夜、山小屋で、新聞社の方々と食事を済ませ、床に就きましたら、ぐっすり眠ってしまい、途中、新聞社の方々から早めに出発したいと、お申し出があったそうですが、なんとも体が動かないので、鍵だけお渡しして、本人は新聞社の方々が下山されるまで山小屋で休んでいた、と、まあ、こういうことでございました。いやはや、新聞社の方々には、申し訳ないことをいたしました」そういいながら、恐縮して肩をすぼめた。
 「!」神田と高見刑事はお互いの目を会わせた。
 「それに、神職にあるものが、軽々しく鍵を渡すなどとは・・・。何とも申しようがなく・・・」宮司は恥ずかしさと無念さで膝の上でハンカチを握った拳を握り締め、
 「ただ、ただ、ご本殿に無礼なことが無かったことをお祈りするばかりでございます」そう言って頭を下げた。

 「新聞社の方々は、帰国の準備があるので、と、五合目でタクシーに乗られて新富士宮駅に向かわれたようでございます」
 「そうですか」そう言って、神田と高見刑事は顔を見合わせた。
 「ところで、昨夜の話の続きですが」高見刑事はお茶を一口すすり宮司に聞いた。
 「話の続き、と申しますと?」
 「その、御文書には何が書かれていたのか、ということですが」高見刑事はポケットから手帳を取り出した。
 「あー、それは私も直接見たり、聞いたりしたことではございませんで、おとぎ話のようなことが書かれていた、ということだけしか」宮司はハンカチを膝の上に置き、湯飲みを両手で持った。
 「おとぎ話?」神田は湯飲みをテーブルに戻した。
 「内容についてどなたかご存知の方はいらっしゃいませんでしょうか?」高見刑事は続けて尋ねた。
 「それはどうでございましょうか?野中様はご長寿で、確か、昭和の30年(1985年)、89歳で天寿を全うされたとお聞きしていますが、生前、その内容については一言も触れていらっしゃいませんし、また、解読した家系の方々も口外していらっしゃらないということです。それに、その鉄の箱と御文書は既にないと思いますが」と、困ったように二人を交互に見つめた。



 「既にない?と言いますと?」神田(かみた)と高見刑事は、宮司の顔を見た。
 「はい。その鉄の箱と御文書はその解読をした神社様から野中様のお手元に返され、しばらくは野中様がご自宅で保管され、その後、不幸なことに、戦時中の空襲で、写しや、資料は焼けてしまったと聞いております」
 「はー、そうですか」高見刑事は、何度かうなずきながら背もたれに背中を倒した。

 神田(かみた)は、いくぶんかの期待を持って、
 「野中さんのご家族の方はその鉄の箱の件は?」と尋ねたが、
 「内容につきましては、まったくご存じないと思います。何しろ、野中様ご自身、その件に関しましては、その後一切口にされなかったようでございますから」と、宮司も申し訳なさそうに答えた。

 神田はさらに、
 「失礼ながら、こちらの先代、あるいは先々代の宮司さんは、御文書の内容をご存知では?」と、尋ねたが、
 「存じてなかったと思います。仮に存じ上げておりましても、その様なこと、軽々しく口にすべきものではございません」宮司は幾分顔を赤らめて言葉を強めた。神田はやや狼狽しながら、再び宮司に尋ねた。
 「では、その鉄の箱に入っていた御文書の分析解読をされた神社さんにはその御文書の控えとか、書き写したものなどは残っていないでしょうか?」
 「どうでございましょうか、終戦後、進駐軍は多くの神社の招魂碑(しょうこんひ)などの施設や書き物を破壊、没収しましたが、その時に、そちらの神社様もかなり大掛かりな捜索を受けたと聞いていますので」宮司は少し腹立たしそうに言った。
 「大掛かりな?」
 「はい。その神社様は、こう言っては何でございますけれども、非常に小さな神社様でして、そこに大勢の進駐軍が押しかけたものですからご近所の方も驚かれたと聞いています」
 「ほー」高見刑事は興味深げにその話を聞いていた。
 「それで、その神社さんはどちらでしょうか?これから伺(うかが)えればと思いますが」神田は体を前に傾けながら尋ねた。
 「はい。それは富士吉田の八頭神社(はっとうじんじゃ)様でございます」宮司は両手を膝にそろえて言った。
 「その八頭神社さんのご住所は?」高見刑事は手帳とボールペン持ったまま、体を前に倒し尋ねた。
 「しばらくお待ちくださいませ」そう言うと部屋を出て行った。
 「神職というものはいろいろとしきたりがあって難しいですね」高見刑事は顔を伏せたまま小声で言った。

 しばらくして、宮司がメモを手に戻ってきた。
 「こちらがご住所でございます。少し分かりにくいと思いますので、このお近くでどなたかにお尋ねくださいませ」宮司は、メモ用紙を高見刑事に渡しながら言った。
 「ありがとうございます。さっそく、お伺してみます。それと、これから、何かございましたら、ここに連絡をお願いします」高見刑事はそう言って胸のポケットから名刺を出し、宮司に手渡した。



 神田(かみた)と高見刑事は新富士宮駅前でレンタカーを借り、東名高速を使って富士吉田の、宮司から教えられた住所に向かった。何度か迷っても辿り着けない。

 「確かこの辺(あた)りのはずですけどね」
 「あ、あの人に聞いて見ましょう」高見刑事は助手席の窓を開けた。
 「恐れ入りますが、この辺りに八頭神社(はっとうじんじゃ)さんがあると聞いて来たんですけど、ご存知ありませんか?」
 「あーあ、八頭社(はっとうしゃ)さんならそこを曲がった突き当りですよ。こんもりとした森が見えますから、その中です」年配の買い物帰りといった風の女性が指を指しながら教えてくれた。
 「ありがとうございました」
 高見刑事は女性に頭を下げ、パワーウィンドウのスイッチをパチッと押すと、神田を見て
 「どうやら地元では八頭社(はっとうしゃ)さんと呼ばれているみたいですね」と言った。

  「確かに、これでは分からないですね」神田はハンドルを切りながら前方の背の高い木が集まっている一画を見た。道端に車を停めて石の階段を10段ほど登ると、椎(しい)や樫(かし)の木に覆われて薄暗い道の奥に小さな神社が見えた。小さいのは社殿だけではない、鳥居も2m足らずの高さしかないし、狛犬(こまいぬ)もまるでミニチュアといった感じで、高さは30cm位しかない。一対の狛犬は腰の高さほどの石の台座の上に座っている。しかも、鳥居の外にあるのが普通だが、この狛犬は鳥居の内側にある。

 「神社というより祠(ほこら)といった方がいいですね」神田は高見刑事を振り返って言った。右隣に小さな民家がある。
 「ごめんください」
 高見刑事は、擦りガラスのはめ込まれた木の引き違い戸を叩いたが返事はない。特に表札らしいものも出ていないが、社務所として使われている気配はある。
 「留守みたいですね」高見刑事は携帯電話を取り出して、富士宮浅間大社(ふじのみやせんげんたいしゃ)の宮司に電話をかけ、連絡先を尋ねた。

 「あいにくとそれは分かりかねますが、心当たりにお聞きしてみましょう。分かりましたら、ご連絡差し上げます」という宮司の返事であった。
 「いろいろとご面倒をおかけしまして申し訳ございませんが、よろしくお願いします」
 神田は、高見刑事が電話をしている間に携帯で神社の写真を撮っていた。御祭神は浅間大菩薩(せんげんだいぼさつ)と木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやひめのみこと)とあった。
 「今回は引き上げですね」高見刑事は右手で左肩を揉みながらそう言い、車の方へ向かって歩いて行った。神田も何度か振り返って神社を見ながら後に続いた。
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